高校独自のデュアルシステム教育にてPepperを活用し、地域の産業を支える担い手を育成(DXハイスクール)
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神奈川県立厚木王子高等学校 様
厚木王子高校では、Pepper導入1年目で出前授業を実施し、2年目でPepperを年間授業に取り入れて活動しています。また、地域活性化のためのイベントでも小中学生向けのプログラミング講座でPepperを活用しています。その詳細について、穂田智範先生にお話を伺いました。
貴校について教えてください。
県立厚木東高校と同厚木商業高校が再編統合し、普通科と総合ビジネス科の併置校として2024(令和6)年度に開校しました。
どのような経緯でPepperを導入しましたか?
2024(令和6)年度、開校した年に、本校がDXハイスクール新規採択されました。その中で、「プログラミング学習の導入を円滑に進めたい」「生成AIなど最新のDX技術を身近に感じながら探究的な学びを深めたい」という思いからPepperを導入しました。
Pepper導入1年目の活用について教えてください。
総合ビジネス科で「情報処理」を履修する1年生159名が、Pepperを活用したプログラミング学習に取り組みました。1月の授業では基礎的なプログラミングを学び、その後「学校での課題を見つけて、解決する運用プログラムを考える」ことに挑戦しました。
2月に実施した出前授業では、これまでの学びを踏まえ、生成AIの活用についても学習しました。まず、「生成AIは事実と異なる情報を出力することがある」理由に気づくため、ゲームを実施しました。クラス全体を1つの「生成AI」と見立て、キーワードの次に来るであろう言葉を連想しました。誰もが同じ言葉を連想するキーワードもあれば、回答が分かれるキーワードもありました。この体験を通して、生成AIがどのように言葉を予測しているのか、誤った情報を生成するのはなぜかを理解しました。
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- また、プロンプトの書き方を学ぶクイズにも挑戦し、実践的なスキルを身につけました。授業の最後には、Pepperの機能を会話形式で紹介するプログラムを作成。クラスメイトが制作したプログラムが狙い通りにユーモラスな返答をすると、教室が盛り上がりました。中には、Pepperの胸部タブレットに表示するオリジナル画像を制作する生徒もいて、創意工夫の様子が見られました。
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「情報処理」の授業でPepperのアプリに関する説明を受けている様子
導入2年目の今年度はどのようにPepperを活用していらっしゃいますか?
今年(2025年)度は、DXハイスクールの県内唯一の「重点枠指定校」として採択されました。
年間通した授業でPepperを扱いたく、2018・2019神奈川県産業教育審議会「地域等との協働における実践的な職業教育及び看護・福祉に関する学科のあり方」の報告に基づき、地域の産業を支える担い手を育成するための学校外教育活動として実施している厚木王子高校版デュアルシステム(厚木商業と通算して4年目)の中にPepperの活動を組み入れました。本取り組みは、「日本版デュアルシステム*」を本校用にアレンジしたものです。
本デュアルシステムは、商業科の3年次課題研究(2単位)履修生徒を対象に提供しており、生徒は4月から10月まで、原則週1回2コマの授業を受講し、そのうち数回の授業に企業講師が出講します。11月にはレポートやプレゼンを作成し、1月に成果発表会で発表します。
18企業・団体と連携した中の1社がソフトバンクロボティクス社です。履修者の中に、Pepper活用を選択した生徒は8名います。それぞれの生徒から「学校や老人ホームなど、ペッパーくんを活用できる場所を増やしたい」「ペッパーくんを活用して、医療機関の人手不足などの課題を解決したい」など意欲的な決意表明がありました。
ひとっ飛びに外部機関の課題解決は難しいため、まずは9月に実施する校内の文化祭に向けて各クラスの催しものの教室名を案内できるプログラムを制作しています。また、18ある企業連携のうち、コーヒーやパンの販売を企画しているコースもありますので、その販売をPepperが助けられるようなプログラムを制作するというアイディアも出ています。
どのような成果を発表できるか、今後が楽しみです。
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作成したおみくじのプログラムで楽しむ様子
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同時に、「厚木王子DX金融DAY」という、デジタルと金融で地域を活性化することを目的として近隣住民向けに年に複数回実施しているイベントでは、その中の1コーナーとして「プログラミングでPepperくんを動かす体験」を取り入れました。
1回目は、高校生が講師となり、中学生を対象にPepperを使った「おみくじ」のプログラミングを体験してもらいました。
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同時に、「厚木王子DX金融DAY」という、デジタルと金融で地域を活性化することを目的として近隣住民向けに年に複数回実施しているイベントでは、その中の1コーナーとして「プログラミングでPepperくんを動かす体験」を取り入れました。
2回目は、主に小中学生とその保護者を対象に企画し、上級者は生成AI機能に挑戦可能の設定としました。その他にはドローンやVRを体験してもらうプログラムや、金融リテラシー検定セミナーも設けています。
冬には、本校の1年生・2年生向けに単発のPepperプログラミング授業を組成予定です。
*「日本版デュアルシステム」:若年者向けの実践的な教育・職業能力開発の仕組みとして、企業での実習と学校での講義等の教育を組合せて実施することにより若者を一人前の職業人に育てる仕組みのことを言います。
出典:専門高校等における 「日本版デュアルシステム」の推進に向けて
https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/shinkou/dual/05011401.pdf