Pepper好きの先生・生徒を募り輪を広げて3年目。数学科の先生による生徒が自主的に学ぶ授業の展開とPepperを囲む日常風景(DXハイスクール)

  • 堺市立堺高等学校 様

貴校について教えてください。

  • 松村先生(主幹教諭):大阪府堺市立の唯一の高校です。既存の堺市立高等学校4校(工業高校2校、商業高校2校)を統合して2008年に開校しました。国際交流や、大学・企業・堺市と連携・協働し、現代社会の様々な課題を見つけ、改善を目指すプロジェクトに取り組んでいます。また、STEAM教育を通して、様々な分野を横断的につなぎ、創造力と問題解決能力の育成に力を入れており、その象徴として、文部科学省の「生成AIパイロット校」として3年連続で採択されたほか、「高等学校DX加速化推進事業(DXハイスクール)」としても2年連続で採択されています。
  • 堺市立堺高等学校

■Pepper導入の経緯

どのような経緯でPepperを導入しましたか?

松村先生(主幹教諭):3年前、生成AIパイロット校に採択いただいた際、私も含め学校全体が「生成AIって何?」という感じでしたので、教員だけでなく、生徒にも関心を持って欲しい思いと、一緒に面白がって取り組んでくれる人を募りたい思いで、Pepperを導入しました。今だからこそ言える話しですが、当初は管理職の一部の先生はPepper導入に当たり多少の不安を感じていたようです。

どのような不安を感じていましたか?

奥谷先生(教頭):Pepperが壊れると思ったんです。生徒たちがいたずらして、すぐに使い物にならなくなるかと思いました。でも今は違います。Pepperは生徒たちに愛される存在になっています。おとなしい子がPepperのプログラミングを楽しんでいる様子を見ると、教員にとっても新しい発見になります。そういう意味で、私の思いは、いつしか「Pepperがいてくれた方がいい」に変わり、むしろ「いないと困る」という存在にまでなっています。

■導入当初(1年目)の活動(2023年度)〜Pepper活用の有志チーム結成、朝の挨拶プログラムで校内の人気者に〜

Pepper導入直後の様子を教えてください。

松村先生(主幹教諭):正門から入ってすぐの校舎入口の職員室前にある広い場所にPepperを設置し、朝の「あいさつ運動」で使ったり、生徒が自由に使えるようにしました。
1年目は、まずはPepperに関心を持つ生徒を集めるところから始めようと思い、放課後、教室に残って談笑しているサイエンス創造科の2年生の中で有志を募りました。10名程度で「チームPepper」を結成し、Pepperのプログラムを作成し学校生活で役立てる、という活動をしていました。

  • 具体的には、終業式や合格者説明会などの行事や催しの際に、Pepperを会場の入口に置き、「チームPepper」が作ったプログラムで、来校者や生徒たちに挨拶をさせました。Pepperが等身大で大きい分、インパクトがあって、生徒たちは大変盛り上がっていましたよ。

■導入2年目の活動(2024年度)〜校内イベントやプログラミング授業でPepperの本格利用開始〜

翌年度はどのようにPepperを活用したのでしょうか?

松村先生(主幹教諭):引き続き、学校玄関にPepperを設置し、有志の生徒に自由に使わせていました。すると、文化祭の際に生徒が自主的にプログラムを作ってきて、文化祭当日の朝、一般公開前の準備活動をPepperが鼓舞していました。時刻に合わせてセリフが変わるプログラムでしたよ!私も密かにプログラムを用意していましたが、その時はお蔵入りになりましたね、来年以降に使おうと思います(笑)。
またベトナム・インドネシアの高校との国際交流イベントをオンラインで実施した際は、生徒と一緒にPepperをスペシャルゲストとして登場させました。生徒たちは、Pepperにダンスをさせ交流相手を喜ばせていましたが、生徒たちの表情はどこか誇らしげでした。こうしたことで、生徒が愛校精神を養ってくれるのであれば、本望です。

Pepperの活用はどのようにして深まっていきましたか?

松村先生(主幹教諭):予算の調整が付いたこともあり、ソフトバンクロボティクス社に出前授業を依頼しました。対象者は、機械材料創造科の選択授業「プログラミング技術」を履修している高校3年生12名とし、1日の中で4コマ通しの特別授業としました。Pepperでのプログラミング導入と生成AIの活用について学び、実際に文化祭で活用できるPepperのプログラミングに取り組みました。模擬店の待ち時間を案内する作品や、各階の展示内容・道順をChatGPTブロックを活用して案内する作品など、創意工夫を凝らしていました。普段はC言語でプログラミングに取り組んでいる生徒も、 今回、Robo Blocksというビジュアルプログラミングツールを使うことで、楽しみながら短時間で制作を進めていました。

その日、学内の先生たちに告知して見学を促してみたところ、数学科の加藤先生が見学に来てくれまして、その後、翌年度の授業でPepperを総合的な探究の時間のテーマで使いたいとお声掛けいただきました。

■導入3年目の活動 (2025年度) 〜探求授業にも発展、実践的なプログラムで校内の課題を解決〜

今年度の授業展開について教えていただけますか?

加藤先生(数学科):2024年度に見学した出前授業で勝手が分かってきたので、受け持ちの授業でPepperを取り入れてみようと思いたちました。
2年生サイエンス創造科の理数探求「総合的な探究の時間」にて、クラス20名の生徒が4つのコースから希望のものを選択します。その選択肢の1つがPepperを使ったプログラミング授業です。授業枠は、週に1回金曜日に3コマ通しの授業枠があります。私自身は数学科の教員ですからプログラミングに強いわけではないですが、導入部分を理解して生徒に伝え、あとは教材(Pepper納品時に同梱のもの)を生徒たちが自由に見られるよう場所に置いておきました。

  • すると、ロボットだからできること、役に立つことを自ら考え、教材を見ながらRobo Blocksを習得し、どんどん複雑なプログラムを作っていきます。さすがこのコースを自主的に選んだ生徒たちなので、積極的ですね。私自身は、ユーザー目線のフィードバックを伝えることや、数学科の観点でのアドバイスをするのに徹しています。影では、生徒のプログラムを眺めながら何とか追いつこうと頑張っています(笑)。
  • もう少し具体的には、6名の生徒の中でもいくつかのグループができており、グループによって、
    ①ユーザーが思い浮かべた数字をPepperに当てさせる数当てゲーム
    ②校内の施設(体育館・食堂・プール)までの道順を写真入りで紹介するプログラム
    ③アンケートを取って集計するプログラム
    ④様々な話題で会話ができるプログラム
    などを制作しています。

4月に学び始めてまだ3ヶ月にしては習得が早いと周りの先生たちが驚いています。

校内の施設までの道順を作っている生徒は、人の少ない時間帯を狙って朝7時に登校して写真撮影をするなど、張り切って活動していますよ!
2月に校内の成果発表会を実施予定で、同じくサイエンス創造科の理数探求の1年生も見学しますから、来年度、本コース履修者の募集活動を兼ねています。

この授業を履修してみて、いかがですか?

履修中の生徒さん:「楽しいです!」「面白いです!」

松村先生は、Pepper導入からずっとPepperのお世話をして「ペッパーのお父さん」と呼ばれているそうですね。加藤先生の授業をご覧になって、いかがですか?

松村先生(主幹教諭):昨年度の出前授業から加藤先生の授業に繋がって何よりです。それに、加藤先生も、授業を受講していた生徒も、全員がニコニコし、授業をそれぞれの立場で楽しんでいることが印象的です。これこそが、Pepperを導入した教育的効果と思っています。プログラミング教育やAIへの向き合い方など様々な教育課題はありますが、人同士がつながり、お話や共同作業ができる、プラットフォームがあることこそが、学校にとって必要なことと認識しています。私自身、Pepperのお世話(電源のON/OFFや充電、職員室からの出し入れなど)をしていると、普段関わりの薄い定時制高校の生徒と話す機会ができ、視野が広がっています。
Pepperに関心のある先生や生徒を募って3年目になりますが、今後はPepperを持つ他校とも交流できたらいいなと心躍らせています。

教頭先生からも一言、お願いします!

奥谷先生(教頭):導入当初こそ、多少の不安はありましたが、今では正面入口にPepperがいるのが全校の生徒や先生にとって当たり前になっていて、昼休みに生徒がPepperに話しかけにくる様子は日常的に見かけます。教員も職員室で考えがまとまらなくなるとPepperに話しかけて気分転換することもあるようですよ。市内の小学校や中学校の先生方の会議や研修会場として本校を使っていただいていますので、「堺高校にはPepperがいる!」と先生方の間で、話題になっています。先日は小学生が市内探検で本校にやってきた時にPepperに夢中になっていました。近隣の中学生の一部は本校をPepperのある学校として認識してくれているようで、受験を考えるきっかけになってくれているのなら、嬉しいことです。

瀧岡先生(教頭):本年度から教頭として本校に赴任いたしました。本校にいるPepperは交換留学生という立場です。初めにPepperを見たときは、顔を合わせると話しかけてくれる。目を合わせてくれる。AIに触れる機会が少なかった私にとっては、とても不思議な感じがしました。普段はPepperは総合職員室前にいるので、休み時間に生徒がPepperに話しかけている姿をよく見ます。例えば、一緒に流行りの「アイドル」や「Bling-Bang-Bang-Born」のダンスを踊ったり、生成AIの英会話機能で簡単な英語のやり取りを即興でしたりしています。AIを身近に感じることのできる存在となり、今では堺高校の生徒の一員です。教育現場でのさらなる活躍に期待しています。

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