人とロボットが役割分担をして効率化が図れる
可能性を強く感じています
- オフィス
- 人手不足解消
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興和不動産ファシリティーズ 様
ソフトバンクロボティクスの除菌清掃ロボット「Whiz」は人手不足を解消するか
赤坂インターシティAIRで効果を聞く
2019.06.10 ロボスタ
2019年4月10日、ソフトバンクロボティクスの除菌清掃ロボット「Whiz」(ウィズ)の普及を共に目指す「AI Clean パートナー」8社が紹介された。さらに、15の施設でWhizの実証実験が行われ、驚くべきことにそのすべての施設がWhizの導入の検討をすすめていると言う。
ロボスタではその施設のひとつ「赤坂インターシティAIR」で実証実験の様子や評価を聞いた。
「赤坂インターシティAIR」は赤坂・虎ノ門エリアを代表する施設のひとつ。地下鉄「溜池山王」駅に直結している。B1階から5階まではショップやレストラン、ダイニング、防災センター、コンファレンスホールなどを備え、6階から上階はオフィスが設けられている大規模な総合施設だ。
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赤坂インターシティAIR」コンファレンスホールの受付ロビー
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「赤坂インターシティAIR」のコンファレンスホール内でも「Whiz」の実証実験が行われた
ビルメンテナンス管理をするのは興和不動産ファシリティーズ。清掃業界が実際に直面している課題とはなにか? 実証実験はどのような環境で行われたのか? Whizは清掃業界の課題を解決できるのか?
清掃部門を担当する小棚木氏に話を聞いた。
150名が清掃業務を担当 課題は人手不足
- 編集部
- まずは御社の事業内容を簡単に教えてください
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- 小棚木氏
- 興和不動産ファシリティーズは、日鉄興和不動産グループのビルを中心に、さまざまなビルのビルメンテナンス業務を担当する会社です。トータル棟数では200棟超の物件で設備管理、設備保守、清掃、受付などの建物総合管理全般を行っています。赤坂インターシティAIRはそのひとつで、設備管理、設備保守、清掃の管理業務を受け持っています。
- 編集部
- 現状での清掃業務を教えてください。何時頃から何名くらいで清掃作業をしているのでしょうか
- 小棚木氏
- 赤坂インターシティAIR全体としては、当社内のスタッフが約70名と、その他協力会社の5社で、併せて合計約150名の清掃員が作業を行っています。主な作業時間は開館前の朝6時から夜9時まで交替で清掃作業にあたっているのが実状です。自動運転の清掃ロボットはまだ導入していません。展示会などに足を運んだり、情報収集をして積極的に検討しているところです。
- 編集部
- 清掃業務における課題を教えてください
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- 小棚木氏
- なんといっても人手不足で、清掃員の確保が困難なことです。募集してもなかなか清掃員が集まらない状況です。もちろんAIロボットによる自動化に期待してはいますが、ロボットが人の代わりになるとは考えていません。ロボットと人が作業を分担し、協業することによって、作業の効率化が図れると考えています。
- 編集部
- 導入を検討するとしたらWhizのようなバキューム式ですか? 清掃する素材はカーペットが多いようですが
- 小棚木氏
- 面積としてはカーペット素材が多いのでバキューム式を検討しています。しかし、エントランスやトイレは石素材などが使われているところもあります。また、床だけでなくガラスや壁、机上などの立体面の清掃も行っています。
広い共用部はロボット導入に向いている
- 編集部
- 今回、Whizの実証実験に参加した理由を教えてください
- 小棚木氏
- 赤坂インターシティAIRの清掃には大きく分けて「共用部」と「専用部」があります。共用部は一般の人が使うロビーや廊下、コンファレンスホールなどを指します。コンファレンスホールでは、ソファーやテーブルの配置が若干変わったり、追加で案内板の設置などがあるものの、日々の大きな変更はそれほどありません。そのため「共用部」では清掃ロボットの導入は比較的しやすいと元々考えていました。共用部の通路などカーペット床面積が大きいところを清掃ロボットで自動化し、ロボットができないテーブルの下や椅子の下の床面および立体面などを清掃員が作業を行うだけでも大きな効率化が見込めます。
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一方、「専用部」はいわゆるオフィスです。ケーブルや段ボール、備品などが床に置かれていたりして清掃も複雑になります。しかし「Whiz」の性能を見ると専用部も人と協働して清掃作業が効率的にできるのではないかと感じ、期待を込めて実証実験に参加しました。
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共用部の例、コンファレンスホールの広い通路。レイアウトの変更も少なくシンプルなので自動運転のWhizには向いている、と言う。椅子の下や壁際は人手による清掃が必要
- 編集部
- 実証実験でWhizを使ってみて、どのような評価をしていますか?
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- 小棚木氏
- 約一週間の実証実験で正確に評価するのは難しいのですが、まず感じたのが「とても扱いやすいこと」と「軽微な環境変化に対応できること」です。 現場の清掃員が使うものなので「扱いやすいこと」はとても重要です。Whizを押して清掃することでティーチングできて、次回からは同じコースを自動清掃してくれます。また、ティーチングは現場のことをよく知っているスタッフが行うことが重要で、清掃効率も大きく変わってきます。
赤坂インターシティAIRのコンファレンスホールを手押しで清掃する様子。同時にWhizが清掃ルートを記憶するティーチングが行われている
- 編集部
- 新しいルートを覚えたり、ルートを変更するのに専用のエンジニアが必要ないということや、現場を熟知したスタッフの方がティーチングできるというのもメリットですね。もうひとつの「軽微な環境変化に対応できる」とは具体的には?
- 小棚木氏
- Whizは「専用部」での軽微な環境変化にもある程度対応できている印象です。例えば、オフィスでは椅子の位置が毎日同じとは限りませんし、床に段ボールやカバンなどが置かれていることもあります。Whizは自動で障害物を認識し、避けて清掃作業を継続してくれるので、そういった環境の変化が日常的に伴うケースにも柔軟に対応できそうだな、と感じています。
清掃をロボットに任せるのではなく、人との協働が重要
- 編集部
- 専用部での清掃手順を具体的に教えていただけますか
- 小棚木氏
- 専用部の場合、清掃できるのが早朝に限られるので、朝6時~9時くらいまでの3時間程度で清掃を行う必要があります。初日はオフィスの中を清掃員がWhizを押して清掃をします。それで自動運転するルートのティーチングを行います。Whizはそのルートを記憶しますので、次回からは自動運転で清掃を行うことができます。
ただ、その前にまず清掃員が椅子を机の中に入れてWhizが稼働できる範囲を広く確保する必要があります。Whizがルート通りに自動清掃を行っている間、ロボットが清掃できない部分を清掃員が行う、という役割分担になります。
日中の時間帯は、共用部の廊下や人通りの少ないエリアで自動清掃を行いました。
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ルートは「ホームロケーションコード」を壁に貼って管理する。1枚のコードで6ルート、最大100枚のコードに対応するので、合計600ルートを登録できる
共用部を自動運転で清掃するWhiz
- 編集部
- Whizの清掃能力として、1時間に約500平米、連続稼働時間が約3時間、ごみパックの容量が4Lという仕様ですが、それについてはどう感じていますか
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- 小棚木氏
- 実証実験の間、朝3時間の作業でバッテリー不足で止まるということはなかったので仕様通りの性能は出ているように思います。バキューム能力については、コードレスバキュームとスイーパーの中間くらいの能力はあると思います。日常清掃で使う分には十分な能力だと感じています。
除菌清掃ロボットに期待すること
- 編集部
- 自動運転の除菌清掃ロボット「Whiz」は実用的と感じましたか?
- 小棚木氏
- 約一週間の実証実験では確実なことは言えませんが、人とロボットが役割分担をして効率化が図れる可能性を強く感じています。
共用部は広範囲のカーペット清掃をロボットが行い、机やソファー、その下などを清掃員が担当するという役割分担ができる見込みは立ちました。日々の変化が大きい専用部に関しては、本格導入した後で、数ヶ月かかるかもしれませんがロボットと人の作業分担を探りながら検討していきたいと思っています。Whizについてはロボットができる範囲を工夫次第で拡げていける、そんな可能性を感じて期待しています。
今後のステップとしては、当初は数台を導入してテストを行っていき、どの程度活用できるかが見えたところで台数を増やすという流れになると思います。人との協働に実用的だと最終的に判断すれば、赤坂インターシティAIRの規模ですと数十台は必要になるでしょう。
- 編集部
- 今後、除菌清掃ロボットにはどのようなことを期待しますか
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- 小棚木氏
- 清掃業務は身体を使う仕事で、清掃内容によっては熟練度も必要です。体力的にきつい作業をロボットが、熟練度が必要な作業をAIが清掃員を支援してくれることで、「清掃業界で働きたい」と思ってくれる人が増えることにも繋がったら・・と期待しています。
- 編集部
- インタビューにご対応頂き、どうもありがとうございました。
赤坂インターシティAIRのような巨大な施設になると、約150名という膨大な数の清掃員の方々が業務にあたっている。廊下やロビーなど、シンプルだが広範なエリアを自動運転のAIロボットで自動化するだけでも効率化が図れる、という小棚木氏の言葉が印象に残った。また、ロボットができるところと人がやるべきところを理解して上手に協業していくこと、これこそがロボットと協働する未来を示していることを改めて実感した。